今年も成人式で様々な話題がありました。
荒れた式典、一般的に見て「?」と思うような成人衣裳などなど毎年騒がれますよね。
以前にもブログに書きましたが、成人式で振袖を花魁風に着ることについて考えてみたいと思います。
まずはそもそも花魁とはどんなものなのか?
現代には無い職業なので正確に例えることは難しいですね。ウィキペディアでご覧頂ければある程度把握して頂けると思います。もちろん職業に貴賎はありません。どんな職業も誰かの役に立つためにあるものですからね。
問題は「花魁」という職業が何かということではなく、成人という節目に「花魁姿」を何故するのかということ。一般的に現代の成人式では女性は振袖を着ますが、これは振袖が和装でも上位に位置する礼装だからです。大切な節目にはそれに応じた服装がふさわしく、その節度を守ることこそが大人の第一歩です。
花魁姿は違うと言わざるを得ません。
近年の花魁風の振袖姿は「肩を出す」「帯を前で結ぶ」ことがイメージされると思いますが、そもそも本来は花魁は肩を出しません。
着物の衿口を開き気味に着付けてはいますが、ご覧のように肩は出して無いんですね。つまり近年の花魁風の着付けは間違った解釈ということになります。
そして帯の前結びはそもそも「帯の豪華さ」をひけらかすと同時に、男性が帯解きしやすいためとも言われています。現代の振袖の帯とは全く別物なんです。
また現在の振袖は花魁風に着付けることを想定した物ではないので、そのように着付けると間違いなくしわ寄せが現れます。上の写真をご覧頂くとお分かりだと思いますが、花魁の着物はふくらみがありますが、振袖は直線的に着付けるもの。肩を出すことにより、背中はその分生地が寄ってしまい美しくありません。
つまり物理的に無理があるわけです。
・・・とこのようなことを書いても、どうするかはご本人次第。
一見華やかに見え、個性を感じるので女性が憧れることも理解できます。どなたにも変身願望ってありますものね!
でもそれでも成人式で・・・これはちょっと違うのではないでしょうか?個人的な楽しみとしてされるのは全然OKですし、良い記念になると思います。でもある意味公式の場で、大人への第一歩の日にするのは深慮されるべきだと思います。
とは言え、花魁風雨の着付けを推奨する貸衣裳店が有るのもまた事実。
「振袖を借りてもらうためにはなんでもする」という方針を持つお店もあれば、伝統文化を啓蒙しつつ振袖を借りて頂くお店もあります。確かに現代は全てにおいて多様化が進んでいますから「何でもあり」ですが、「何でもいい」わけではありません。
『成人式の時だけ楽しければいい』と考えるのもわかりますが、果たしてその姿は未来の自分や家族への贈り物となるでしょうか?
花魁風の姿はいつでも出来ますが、成人式はどなたにも等しく一生に一度しかありません。その一度を使ってしまっては勿体無いと思いませんか。
先日、気になる存在の同業のフォトスタジオさんのウェブサイトを拝見した所、堂々と花魁風に着つけた振袖のお客様の写真が掲載されていました。そのサイトには「振袖マナー」やら「豆知識」やらの特集があるのですが・・・・今は全く気にならない存在になりました。
当店では振袖の花魁風着付けはこれまでも、そしてこれからも一切お受けしません。
理由はそれがお客様のためにならないと考えていますし、成人式がどういうものか理解しているから。つまらない、お客のニーズに応えないお店と思われても全く構いません。
だって嫌な仕事はしたくないですから。ただそれだけです。