あと一ヶ月もしないで卒業式シーズンが始まります。
abitoも昨年後半から現在まで多くのお客様にご予約を頂いておりますが、他店に比べて先生の利用率がかなり高めだと思っています。
先生の袴姿は学生さんに比べて落ち着きのある雰囲気ですね。
ぶっちゃけて言えば、卒業袴のレンタル価格は「先生用」より「学生用」の方が比較的高めなので、より多くの学生さんにご利用頂きたいという思いもあります。ですが違った側面もあります。
それは「リピート」です。
学生は基本一度きりのご利用ですが、先生方は卒業生を受けもつ度にご利用くださることがあり、これまで5回以上ご利用くださった先生もいらっしゃいます。複数回のご利用を本当にありがたく思うと同時に、当店のサービスにご納得してくださっていることの表れでもあるのかなと喜んでいます。いずれにしても広告や宣伝を一切していないにもかかわらず、学生、先生を問わずご利用頂けるのは本当に有難いものです。
さて本題に入ります。
時折お客様から想定もしていないご質問をいただく事があります。
店内的には一切疑問に感じていなかったことに一石を投じられ、「あれ?そう言えば実際どうなんだろう?」と専門家にもかかわらず即座にお返事できないこともあります。
さてさてどんな質問だったのでしょう。
小振袖は既婚者でも着ても良いのか問題
この質問を頂いた時、数秒ほどフリーズしてしまいました。
これまで小振袖については既婚、未婚という概念を持っておらず、学生より年齢が上の既婚者の方には年代に応じた小振袖をご提案していましたからね。でも良くよく考えればこの質問は的を得ています。その肝となるのが小振袖という名称に含まれる「振袖」という言葉です。
そう一般的に振袖と言えば成人式に着用する着物で、ご存知の通り、未婚女性の正礼装として知られています。
つまり未婚を象徴する「振袖」というキーワードが含まれていることにより、既婚のお客様の中には「あれ?大丈夫なのかな?」という不安が過ぎってしまっても不思議ではありません。
しかし当店では創業以来30年以上にも渡り、このことに一切疑問を持たず、そして当然のように既婚のお客様に小振袖をおすすめしましたし、ご利用頂いてきました。実績、経験から言えばこの質問に対する答えは「問題ありません」となりますが、そこには確固たる自信と確証は存在しません。
だから同業者仲間、そして和装メーカに連絡しまくって答えを得ることが出来ました。
小振袖は既婚者でも着用可能
そう答えは「問題ない」とのことでした。
卒業衣装のネットレンタルを全国展開されている会社の社長さんにも確認を取りましたが、「大丈夫ですよ~、その質問結構あるんですよね」と笑っていました。他にもいろいろ確認を取りましたが、やはり同様に大丈夫との答えばかりでした。
もし「NG」だった場合、これまでのお客様に申し訳も立ちませんから本当にホッとしました。でも答えだけでは釈然としませんよね、皆さんも。その理由をお答えしたいと思います。
小振袖には別称がある
そもそも「振袖」という言葉があるからややこしいんですよね。
当店では創業以来、「小振袖」という名称を多用してきましたが、実は「二尺袖(にしゃくそで)」という別称があるんです。地域やお店によってはこちらを多用することもあるんです。
こうなると「振袖」という概念がなくなり、既婚者の方も気になさることはないはずです。
勝手に小振袖という名称の由来を想像してみた
ここからは勝手な想像でしかありませんが、「小振袖」という名称は以前からあるものではなく、かなり近年になったから作られた物ではないかと想像しています。基本的に卒業袴のメインターゲットは大学・短大・専門学校を卒業される女性の方々で、年齢は十代後半から二十代前半の方が殆んどです。そういった若い方々には「二尺袖」よりは「小振袖」という名称の方がより響きやすいからではないかと考えます。
もしそうだとしたら小振袖という言葉を作ったのは我々のようなレンタル衣裳店ではなく、多分和装メーカさんではないかと。その理由は「売りやすい」からでしょうね。もちろん店舗側にとっても学生さんに利用して頂きやすいですから、いつの間にかこの言葉が浸透していったと考えるのが自然な流れだと思います。
最後に・・・
着物の世界には受け継がれている「ルール」みたいなものが少なからずあります。
留袖は既婚女性の正礼装となっていたり、着物は「左前」(右前は死者)といったものなど様々です。しかし以前に比べるとかなり緩和しており、絶対的なルールなんてものはないに等しい時代です。※左前ルールは絶対ですからご注意下さい。
例えば二十歳前に結婚された方でも成人式には振袖をお召しになりますし、地域によっては女性でも成人式に紋付袴でのぞまれる方(やんちゃですね♡)なんかもいらっしゃいます。そんな姿に「NO」というご意見を持つ方もおりますが、それはひとえに伝統文化を守りた一心でのことあり、なくてはならない存在だと思います。
しかし大半の方がおおらかな反応をされる時代ですね。
でもそれは自分ではないからです。殆んどの方はいざ自分がその立場になった場合、文化伝統はもちろん、受け継がれてきたルールを遵守した上で着物を楽しみたいんです。今回の小振袖問題も同じなんですね。
不安や疑問を感じながらだと気持ち悪いですし、せっかくのおめでたい日はすっきりとした気持ちで迎えたいものです。
ご質問いただいたお客様には後日お電話をし、経緯を結果をお伝えしたところすっかり安心してくださったようです。当店としても日々「当然」とおもいこんでしまったことをもう一度客観視する大切さを教えていただいた有難い機会となりました。
今年卒業式を迎える既婚の皆様、安心して「小振袖」をご着用下さい。