これまで紋付袴は結婚式などのごく限られた時のみに着る衣裳としてされてきましたが、最近では成人式や七五三においてのお父様の衣裳としても着て頂く機会が増えてきました。特に黒の羽二重の羽織、そして仙台平の袴の組合せは男性和装の最高礼装なので、慶事はもちろん弔事でも着て頂くことが可能です。
つまり思っている以上に融通の利く和装なんです。
現在はこのように着る機会が多くなったことで、「機会があったらぜひ着用したい!」という方も少なくないはずです。やっぱり和装を着るとなんていうんですかね、「日本人で良かった」とか「身が引き締まる」とかポジティブな想いが頭の中に駆け巡ります。そんなこともあり是非積極的に着て頂ければ、衣裳店としては嬉しく思うわけです。
もし「そんな機会」が訪れたときに知っておきたい4つのことをお知らせしたいと思います。まずは注意すべき箇所の画像です。
衿元、前身頃の家紋、袖口、裾の4箇所です。
➀衿元
画像でお分かりのように、意外と開きがちとなります。和装下着である肌襦袢を着て頂ければ問題ないのですが、実際肌襦袢をご用意される方は少ないもの。その場合はクルーネック(丸首)の下着ではなく、ブイネックもしくはUネックなどの開きが深い下着をご用意してください。
下着が見えたらとてもかっこ悪いですからね。
➁前身頃の家紋
こちらの画像は悪い例なんです(笑)
何故かと言うと、ほとんど家紋が出ていないからです。撮影する際にはこの家紋が見えていなければなりません。もちろん注意すべきなのは撮影側なのですが、お客様も注意して頂ければと思います。
またレンタルの場合、この家紋はいわゆる見栄えの良い家紋が予めあしらわれています。もしご先祖から代々受け継ぐ家紋にこだわりをお持ちであるのであれば、レンタルする際にお店の方に相談してみて下さい。
貼り紋というシール様式の家紋を元々ある紋の上から貼ることで、そのこだわりに対応することができます。しかし家紋によっては時間がかかることもあるので、できるだけ早めに相談することがおすすめです。
③袖元
必ず不可ということではありませんが、できるだけ紋付袴を着用する際には腕時計は外されたほうが粋だと思います。シンプルに着こなしてこそ和装はかっこいいものですからね。また袖の長さは短いくても長すぎてもいけません。
そして紋付袴を真冬に着るときもありますよね?
この袖口から冷たい空気が入り、そのまま体温調整を司っている脇に流れると想像以上に寒さを感じます。なので冬の場合は寒さ、そして風対策としてヒートテックのような長袖を身に付けることをおすすめします。
でも外から見えないように多少まくったりして、長さの調整をされることもお忘れなく。
④袴の裾
この裾の長さも重要です。
まずは軽く足を開いた状態でも足袋の上部が見えないようにすること、そしてまっすぐ立った状態で袴の裾が足の甲につかない長さがおすすめです。また階段などを上がる際には袴を踏んでしまったり、引っかかったりして下にずれてきてしまうこともあるので、上がる際には両手で袴を持ち上げてください。
また袴は男性にとって違和感を感じる衣裳です。
なぜなら普段では絶対に履かないスカートのようなものなので、スカスカして何となく落ち着きません。そしてこちらも冬の場合は寒さを大きく感じます。
やはり冬の場合はヒートテックのような寒さ対策は欠かせません。真冬ならば一枚でなく、二枚重ねをしてもいいくらいかもしれません。
紋付袴は日本の伝統的な衣裳ではありますが、現代においては非日常のものです。
一生に一度か二度くらいしか着る機会がないものですから、わからないことがあるのは当然の事です。でもどうせ着るならかっこよく着こなしたいものですよね。そして季節に合わせた工夫があってこそ快適に過ごせるものです。
非日常の衣裳について知らないことは全く恥ずかしいことではありませんから、ちょっとでも不安なことがあれば専門家に気軽に相談してみましょう。是非何かの折にはこの紋付袴を着て頂き、日本人ならではの喜びを感じて頂けたらと思います。