大学生の頃、東京下北沢のアパレルショップで社員並に朝から晩までアルバイトをしていました。
おそらく、大学にいるより長い時間を過ごしていたと思います。ただその時間、経験は現在の私の礎となっており、今の自分を形成したと思っています。
当時はバブル全盛で、アメカジブーム真っ只中。
バイトしていた店ではかなり早い段階でLEVIS501XXといったヴィンテージデニムを扱っており、その後一大ブームとなり販売価格もうなぎ上りになっていきました。要は古着のデニムの需要が増え、価格が釣り上がっていったワケですね。
それと同時に古いけど未使用・・・いわゆる「デッドストック」のデニムにも注目が集まり、今でも商品によっては何十万、何百万円という価格がついています。ここまでくると趣味趣向というよりは、投機目的の商品と言えるかもしれません。
今でこそ「デッドストック」という言葉は浸透していますが、その発端はこのブームだったと言えます。私も当時は知ったかぶりで、よく使っていたものです。ちょっとマニアック的な、あるいは業界的な単語を使うことで、自分も流行の最先端にいると思っていたのかもしれません。しょせん田舎者ですからね。
時が過ぎ・・・今はデッドストックという言葉を使うことはなくなりました。そういう環境にいないということもありますが、このデッドストックという言葉の本当の意味を知ってからかもしれません。
「デッドストック」と聞くと、何となく貴重で価値のある、今では手に入れる事の難しい商品を思い浮かべる方が殆んどだと思います。以前は私もそうでしたからね。でも実はそういう意味ではなく、どちらかといえば「売れ残り在庫」というらしいんです。
【デッド(DEAD)=死んだ】+【ストック(STOCK)=在庫品】・・・そのままの意味です。言わば価値のない在庫であり、売れなかった商品ですね。日本で汎用的に使われている意味とは真逆とはビックリでした。まぁ日本国内では通じるので、そこまで気にすることはないのかもしれませんが、海外では通用しないのでお気をつけ下さい。
それでは海外ではどういった言葉となるのかというと【VINTAGE STOCK(ヴィンテージストック)】です。
古いものだけど未使用の価値ある商品を表わします。とは言え、ヴィンテージストックという言葉を使用しているのを聞いたことはないので、知らない方が殆んどだと思います。
でも【デッドストック】と【ヴィンテージストック】を並べてみると、やはり後者の方が明らかに価値がありそうな気がしませんか?どうせなら価値がより高まる方を使った方がいいですし、「実はこうこうなんですよ」と会話の糸口にもなりますからね。
身近な事でいうと、例えば黒留袖。
以前であれば「高級留袖」とかで表現していましたが、「プレミアム留袖」と比較した場合、高級という言葉がぼやける感じがします。時代も関係していると思いますが、当店ではプレミアムと表現しています。
同じような意味でも、どの言葉を使うかによって「価値」「伝わり方」が変わってくるので難しいですね。メディアや今ならSNS等で当たり前に使用されている言葉も、実は意味が違うことって結構あります。それなりに大人になったので、少しずつ勉強し、正しい言葉、正しい使い方をしていきたいと思う今日この頃です。