念頭の「ハレノヒ事件」から1ヶ月以上がたちました。
被害に遭われたはたちの方々の心中をお察しすると共に、今後このようなことが二度と起こらないことを願って止みません。また事件のあった地域の有志の方がたによる振袖の無償レンタル、お着付け、記念撮影が行なわれたことに対しては同業として誇らしく思います。両者の二十歳に対する想いは全くの間逆ですが、何故このように違いがあるのでしょう?
振袖ビジネスは国取り合戦
一度振袖販売とレンタルを大きく手がける会社さんに訪問し、お話しを聞く機会がありました。代表の方が話された内容で特に印象的だったのは「振袖ビジネスは国取り合戦のようなもの」という言葉です。
どなたにとっても一生に一度の成人式。その年に成人式を迎える方々の人数は決まっており、いわば「奪い合い」とのこと。
少しでも早く仕掛け、少しでも多くの二十歳を囲い込むことこそが大切だと考えている訳です。もちろん振袖の販売やレンタルもビジネスですからあながち間違った考えではないとは思います。しかしそこに二十歳の方々への「想い」があるのかはわかりません。
会社にとっては「多くの中の一人のお客様」かもしれませんが、お客様にとっては「多くの会社から選んだたった一つの会社」であることを十分に理解できているのでしょうか?そういった考えの積み重ねは間違いなくお客様に伝わってしまいます。ましてやハレノヒ事件後の今後はお客様も疑心暗鬼になっているで敏感に反応されることでしょう。
そもそも振袖決定を早くさせすぎ
近年は高校を卒業した年の5~6月には早くも成人式振袖のアプローチが始まります。DM送付に始まり、電話営業、訪問営業とありとあらゆる振袖業者が仕掛けていきますので「そろそろ・・・」と思ってしまいがちです。なかでも一番焦って振袖を決めてしまう理由は「友達が振袖を決めた」ということです。
仲の良い友達が既に成人式の準備が完了していると聞くと焦るのはしょうがないのかもしれませんが、お友達はお友達であり、あなたはあなたです。状況も環境も違うのですから、スケジュールが違ってもなんら不思議ではありません。むしろ当然ではないでしょうか。
また私はいろんなお客様にお伝えしていることがありますが、こんなことです。
「高校を卒業してから成人式までの約2年間は女性にとって人生の内でもっとも変化が激しい期間です。高校生活ではしなかったメークも毎日するようになり、それまで着ていた制服から私服になり、これまでと違った人々との出会いは女性を変えます。ファッション、ライフスタイルの変化が激しいので、高校卒業後の感覚と約1年半後の感覚ではギャップがあるはずです。焦る気持ちもわかりますが、振袖は逃げません。まずは大人の女性としての感覚がある程度安定するのを待ってから振袖を選ぶ方がより賢明です」
高校卒業後は「絶対かわいい振袖がいい!」と思っていても、1年後には「やっぱり大人っぽい振袖かな?」とか「シックな振袖」と想うことがあるかもしれません。もちろん柄だけでなく、色の好みも変化する可能性は大です。
本当に二十歳のお客様のことを想えば、あまりにも早く振袖を決めさせることはお客様のためとは言いがたいはずです。「焦らせる」「危機感を覚えさせる」というのもビジネスの手法の一つですけど、振袖ビジネスにはそぐわないと思います。
何はともあれ、ハレノヒ事件によってお客様の考え方も変わりつつあります。昨年までの青田刈りのようなビジネスをすればするほどお客様に警戒心を与えることになり、その積み重ねで「成人式に振袖は不要」という風潮になりかねません。これからも長く振袖ビジネスを継続していくためにも、一旦立ち止まってビジネスモデルを再考してみなければなりません。
お客様を見てこそ、真のビジネスだと思います。そして変化してこそ生きながらえるのはダーウィンの「進化論」で証明されています。
「賢者は歴史から学び、愚者は経験から学ぶ」
この言葉がいま私の頭の中を駆け巡っています。